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・・・あれは私が中学生に上がったばかりだから、
まだ熱帯魚店でサンゴを洗うバイトをしていた頃だったと思う。

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ワシャワシャ


私には体が大きな友人がいた。
近所に住む『日雇い労働者の大将』だ。
たしか年齢は30歳~くらい?だったと思う。

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ほぼホームレス


若い頃は暴走族をしており、背が高く顔が良いということで、
地元ではちょっとした田舎のアイドル的存在だったのだが・・・

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時の流れは残酷だよね


・・今はもう見る影もない、
ただの小汚いオッサンだった。


彼は社会に負けたのだ。コネで入社した大手企業を追い出され。
新しい職も見つからず、日雇い仕事でその日暮らしをする毎日。


タバコ吸ってパチンコを打って日雇いに行く。
その繰り返しだけの毎日だ・・・・

昔あれほどいた舎弟やファンも、もういない。
みんな就職したり結婚してちゃんと社会人をやっているのだ。


大将だけが・・・なんというか・・こう・・
苦しい状況に立たされていた。
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生きてるだけで精一杯って感じ


私たちはときどき顔をわせると、食事に行ったり。
バイクでドライブをしたりした。

いつも大将は言うんだ「おれは大きい男になるんだ!」と。
私も内心(いや、絶対無理だろ)と思いつつも・・・


「うん・・大将ならできるよ」と励まし続けていた。

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そう言ってないと、やってられない時もあるよね


実は大将は職人になって起業する夢を描いていた。

絶望の中、日雇い現場で働く「職人(大工)」を目にした時。
そのカッコイイ姿に憧れを抱いたのだそうだ。


・・・・運命を感じたそうだ。

「オレがなるべきなのは職人だ!!!!」
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目標が見つかって良かったね。


そして近所で設備屋をしてたヨネさんの元へ
「職人になるために、お手伝わせてください!」と言って、
かなり強引に弟子入りしてしまったのだ。

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迷惑だけど「金はいらない」というからokしたらしい。


その設備屋のヨネさんとは、
後に私も一緒に働くことになるのだが・・・


彼は後々、大将のことをこう評していた。

「アイツはなーんもできねぇ!」

「大将が工具を持って現場に出ると、
 必ずなーんか壊しちまうんだよ!」

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「自分がボロボロになるか、なんかボロボロにして
 帰ってくるかのどっちかだわガハハッ!!!」
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大将は尋常じゃないほど不器用だった。


だから何度も何度も設備屋のヨネさんはこう言った。

「やめとけ、向いてないって!」


しかし大将は諦めない!
おっちゃんから絶対に離れず。
毎日懸命に「職人」についての勉強し続けた。

勉強もしたことがない。スポーツもしたことがない。
そんな遊び人だった彼にとって人生初の「努力」だったのかもしれない。
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次第にヨネさんも大将を応援するようになった。



初めて真剣に取り組めることを見つけた
大将はイキイキと働いていた。

仕事を辞めさせられてから感じた劣等感。
無限に続く先の見えない日雇い生活の日々。

「一人前になって親を安心させたい!」
「周りのやつらを見返したい!」

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そういう気持ちがバネになったんだろう・・
もちろん私も懸命に頑張る大将を応援し続けた。

大将は必死にがんばっていた。

「ヨネさんのとこで修行して、一人前の職人になるんだ」
と。

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覚えることはたくさんある。大変だったろう。


・・・そして時は流れ・・ついに大将は私の元にやってきて
胸を張って高らかにこう宣言した。

「さぁ起業する準備ができたぞ!」

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うおおおおお!!!


私は大将の頑張りをずっと聞いていたから、
感激して涙がこぼれ落ちそうだった。


「すごいね!がんばったね大将!どんな会社?」

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「・・・・おうっ清掃会社だ!」

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「・・・・・え?」

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「ん?・・・どういうこと???」

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私もヨネさんもパニックだった・・


・・・大将が起こした会社は修行したこととは
全く関係ない『清掃会社』だった。


そもそも大将は最初は大工さんに憧れてたはずなのに、
修行してもらったヨネさんは主に空調工事の人だ。

そして大将が起業したのは清掃会社。
みごとにバラッバラ!!!なのだ。


「えっ・・でも大将がしてた修行とは
なにも関係無いし・・清掃とかできるの?」


「・・はぁ?何言ってんだよ!ただの掃除だぞ?」
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はははははっ

・・・大将は恐ろしいほど安易だった。


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